はじめに
前回はスイッチング式LEDドライバーを使うと効率良くパワーLEDを駆動できるという話をしました。
今回はLEDドライバーの選定と駆動回路の設計を行います。
目次
1. LEDドライバー CL6807
使用するLEDドライバーはCHIPLINK社のCL6807(秋月電子通販コード:I-06277)というICです。
図1 CL6807外観(秋月電子通商 商品ページより)
1WパワーLEDを点灯させるには順電圧が約3.3[V]、順電流が約300[mA]必要です。ですので、LEDドライバーが流せる電流は300[mA]にマージンを加えて500[mA]くらいは欲しいです。
秋月電子で扱っているスイッチング式のLEDドライバーで500[mA]以上流せてかつ、電子工作で使えそうなICはこのCL6807と類似品のCL6808の2種類しか見つかりませんでした。CL6807とCL6808の違いですが、CL6808の方がやや価格が高く、流せる電流が大きいです。
とはいえ1WパワーLEDを点灯させるにはCL6807でも十分なので、CL6807を使うことにしました。
CL6807の特徴を下記に記します
- 動作電圧範囲がDC8V〜30Vと電子工作で扱いやすい
- 最大電流が1Aまでなので3WパワーLEDまでなら駆動可能
- ICパッケージがSOT89-5なので、変換基板は必要なものの手作業で半田付け可能
- 秋月で4個150円と入手性が良い
- 調光機能がある
これらの特徴から電子工作で使うには扱いやすいです。このLEDドライバーを使ってパワーLED駆動回路を作成します。
2. 回路設計
CL6807のデータシートより、標準回路は図2のようになっています。このような回路が基本のようです。
図2 CL6807標準回路
図2の回路を元に、1WパワーLEDを3個直列で点灯させることができ、かつ秋月電子で入手できそうな部品を選びんで設計した回路が図3です。
図3 パワーLED駆動回路
データシートからの主な変更点は以下の通りです。
- 電流検知抵抗Rsを0.47[Ω]と1.0[Ω]の並列接続に→LED順電流を約300[mA]にするため
- インダクタに47Ωを仕様→入手の都合
- LEDの両端にコンデンサを追加→リップルノイズの除去
CL6807では順電流の値IdをRsの抵抗値で決めます。計算式はデータシートよりId[A]=0.1/Rs[Ω]です(p.2 Pin Description)。流したい順電流は300[mA]ですので、計算するとRsの抵抗値は0.333[Ω]です。ですが残念ながら0.33[Ω]の抵抗器が秋月電子で売っていなかったので、0.47[Ω]と1.0[Ω]を並列接続し合成抵抗0.320[Ω]として代用します。このときの順電流の設計値は313[mA]です。
またRsの抵抗器を選ぶ際は抵抗値だけでなく、精度も重要です。Rsの抵抗値を元に順電流が決まるため、Rsのバラつきが大きければその分順電流のバラつきも大きくなります。そこでRsには精度がよい金属皮膜抵抗器(誤差±1%)を使います。ちなみに一般的な炭素皮膜抵抗器の誤差は±5%です。
CL6807のデータシートに "In cases when a lower LED current ripple is needed, a capacitor can be placed across the LED terminals." (p.6 LED Current Ripple)と記載されていました。使用するパワーLEDが低リップルを要求するのかどうかは分かりませんが、念のためコンデンサC6を追加しました。コンデンサの容量を1[μF]にしたのは適当です。
1WパワーLEDの順電圧は約3.3[V]なので、3個直列接続にすると順電圧の合計は約10[V]です。なので電源電圧は10[V]+αとして15[V]としました。12V電源でもおそらく動くでしょうけれど、念のためにマージンを持たせて15[V]にしました。
おわりに
今回は使用するLEDドライバーとしてCL6807を選び、回路を設計しました。次回は回路を基板に実装します。