2017年07月24日

照明器具製作 第6回:部品選定・回路設計

はじめに

前回スイッチング式LEDドライバーを使うと効率良くパワーLEDを駆動できるという話をしました。
今回はLEDドライバーの選定と駆動回路の設計を行います。

目次


1. LEDドライバー CL6807

使用するLEDドライバーはCHIPLINK社のCL6807(秋月電子通販コード:I-06277)というICです。
I-06277.JPG
図1 CL6807外観(秋月電子通商 商品ページより)
1WパワーLEDを点灯させるには順電圧が約3.3[V]、順電流が約300[mA]必要です。ですので、LEDドライバーが流せる電流は300[mA]にマージンを加えて500[mA]くらいは欲しいです。
秋月電子で扱っているスイッチング式のLEDドライバーで500[mA]以上流せてかつ、電子工作で使えそうなICはこのCL6807と類似品のCL6808の2種類しか見つかりませんでした。CL6807とCL6808の違いですが、CL6808の方がやや価格が高く、流せる電流が大きいです。
とはいえ1WパワーLEDを点灯させるにはCL6807でも十分なので、CL6807を使うことにしました。
CL6807の特徴を下記に記します
    • 動作電圧範囲がDC8V〜30Vと電子工作で扱いやすい
    • 最大電流が1Aまでなので3WパワーLEDまでなら駆動可能
    • ICパッケージがSOT89-5なので、変換基板は必要なものの手作業で半田付け可能
    • 秋月で4個150円と入手性が良い
    • 調光機能がある
これらの特徴から電子工作で使うには扱いやすいです。このLEDドライバーを使ってパワーLED駆動回路を作成します。

2. 回路設計

CL6807のデータシートより、標準回路は図2のようになっています。このような回路が基本のようです。
2017-02-19.png
図2 CL6807標準回路
図2の回路を元に、1WパワーLEDを3個直列で点灯させることができ、かつ秋月電子で入手できそうな部品を選びんで設計した回路が図3です。
2017-06-10 - コピー.png
図3 パワーLED駆動回路
データシートからの主な変更点は以下の通りです。
    • 電流検知抵抗Rsを0.47[Ω]と1.0[Ω]の並列接続に→LED順電流を約300[mA]にするため
    • インダクタに47Ωを仕様→入手の都合
    • LEDの両端にコンデンサを追加→リップルノイズの除去
CL6807では順電流の値IdをRsの抵抗値で決めます。計算式はデータシートよりId[A]=0.1/Rs[Ω]です(p.2 Pin Description)。流したい順電流は300[mA]ですので、計算するとRsの抵抗値は0.333[Ω]です。ですが残念ながら0.33[Ω]の抵抗器が秋月電子で売っていなかったので、0.47[Ω]と1.0[Ω]を並列接続し合成抵抗0.320[Ω]として代用します。このときの順電流の設計値は313[mA]です。
またRsの抵抗器を選ぶ際は抵抗値だけでなく、精度も重要です。Rsの抵抗値を元に順電流が決まるため、Rsのバラつきが大きければその分順電流のバラつきも大きくなります。そこでRsには精度がよい金属皮膜抵抗器(誤差±1%)を使います。ちなみに一般的な炭素皮膜抵抗器の誤差は±5%です。
CL6807のデータシートに "In cases when a lower LED current ripple is needed, a capacitor can be placed across the LED terminals." (p.6 LED Current Ripple)と記載されていました。使用するパワーLEDが低リップルを要求するのかどうかは分かりませんが、念のためコンデンサC6を追加しました。コンデンサの容量を1[μF]にしたのは適当です。
1WパワーLEDの順電圧は約3.3[V]なので、3個直列接続にすると順電圧の合計は約10[V]です。なので電源電圧は10[V]+αとして15[V]としました。12V電源でもおそらく動くでしょうけれど、念のためにマージンを持たせて15[V]にしました。

おわりに

今回は使用するLEDドライバーとしてCL6807を選び、回路を設計しました。次回は回路を基板に実装します。

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2017年07月17日

プリント基板を注文しました

照明器具の記事の更新は途中ですが、回路をプリント基板にしてみました。
DEwjIL0VwAAvgH9.jpg
製造を依頼したのはFusion PCBです。価格は上記の基板を5枚製造し、送料込みで\3,330でした。注文してから7日後に届きました。
今回は届いた基板の写真だけですが、いずれ基板の設計や発注などについても詳しく説明しようと思います。
ラベル:プリント基板
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2017年07月10日

照明器具製作 第5回:パワーLEDについて2(パワーLEDの駆動方式)

はじめに

前回はパワーLEDの特徴や放熱の必要性について説明しました。今回はパワーLEDの駆動方式(使い方)について説明します。
 

目次

 

1. 電流制限抵抗による駆動

パワーLEDも基本的な考えは普通のLEDと同じですので、抵抗1個で順電流を制限することが可能です。普通のLEDと同じように電源電圧、順電圧、順電流から抵抗値を計算できます
 
この方法でもパワーLEDを動かせることはできますが、パワーLEDは普通のLEDより順電流が圧倒的に大きいため、下記のような問題が起きます。
  • 抵抗器で消費する電力が大きい(電力効率の低下、大電力抵抗器が必要)
  • 発熱により順電圧や順電流に変動が発生する。最悪の場合部品が壊れる
そのためパワーLEDを電流制限抵抗で駆動するのはよい方法ではありません
 

2. 定電流回路による駆動

順電流を一定に保つ方法として定電流回路(常に一定の電流が流れる回路)を利用する方法もあります。定電流回路はダイオードやオペアンプで作れます。
この方式のメリットとしては温度変動に強い回路を組むことができます。そのため電流制限抵抗による駆動よりも安定します。
ですが、電源電圧とパワーLEDの順電圧の差分の電力が無駄になるというのは電流制限抵抗による駆動と同じです。そのため電力効率はよくありません
 

3. スイッチング式LEDドライバーによる駆動

電力効率をよくするための駆動方式として、スイッチング式LEDドライバーを使うという方法があります。スイッチングレギュレーターのようにON/OFFを高速で繰り返すことによって、電流を一定に保ちます。そのため他の駆動方式に比べると電力効率が良いです。
デメリットとしてはON/OFFの切り替えによりノイズが発生してしまうことです。そのためラジオの受信などには影響が出てしまうかもしれません。
 

おわりに

パワーLEDの駆動方式を3つ紹介しました。この3つの中で最も電力効率が良いスイッチング式LEDドライバーを採用します。
次回は秋月電子で販売されているLEDドライバーCL6807を使って、パワーLED駆動の回路を作成します。
 

参考資料

  1. "パワーLED 基礎と定電流装置製作編". サイト名:マルツパーツ館 パーツまめ知識. https://www.marutsu.co.jp/contents/shop/marutsu/mame/194.html, (参照日:2017-07-10)
  2. "LEDドライバから学ぶ コンバータ部のスイッチング回路 ". サイト名:EDN Japan 電子設計の基本と応用がわかる. http://ednjapan.com/edn/articles/1206/28/news025.html, (参照日:2017-07-10)
  3. "LED駆動の基礎と最新技術動向、損失低減や電流精度向上に向けた改善進む". サイト名:Texas Instruments. http://www.tij.co.jp/lsds/ti_ja/analog/new_wave/nw04_led_drive_circuit.page, (参照日:2017-07-10)
 

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2017年07月03日

オーディオ機器の作成2 スピーカーの改良

以前オーディオ機器を作ったと記事を書きました。秋月電子で売っているスピーカーユニットF77G98-6とFOSTEX製ボックスP800-Eの組みあわせでスピーカーを作りました。
 
P2290707.jpg
 
ですが、不満点が2点ほどあったので改善してみました
 

1つ目の改善点はバッフルの追加です。
スピーカーユニットの径がスピーカーボックスの穴系より大きいため、そのまま取り付けると浮いてしまいます。
 
P2290709.jpg
 
そこでこの隙間を埋めるために、3Dプリンターでバッフルを作成して取り付けました
 
P2290711.jpg
 
これでスピーカーユニットとスピーカーボックスが密着するようになりました。
 

2つ目の改善点は平面サブコーンの追加です。実際に音を鳴らしてみると高音域があまり出ていないのか、こもったような音がしました。
そこで何か対策はないかと検索してみると、私と同じように感じて高音域の改善を試みている方がいました。
 
 
この方の記事によると、
「薄くて密度の高い素材を直径30mmの円形にし、センターキャップに貼り付けると高音域が改善する」
とのことです。これを平面サブコーンと呼び、テレホンカードやアルミの薄板で作成すると良好な結果が得られたみたいです。 
 
私の手元にはテレホンカードもアルミの薄板もありませんので、スピーカーユニットが入っていたプラスチックケースを利用しました。
直径30mmの円を作って貼ろうとしましたが上手く取り付けられずスピーカーのコーンに触れそうだったため、ちょっと小さい28mmの円にしました。
平面サブコーンを取り付けることでちょっとこもったような感じが減ったかな?といった感じです。悪化している感じはしないので、とりあえず平面サブコーンは付けたままにします。
 

バッフルと平面サブコーンを取り付けたスピーカーの写真が下図です。
 
P2290713.jpg
 
音質的にはとても良いというわけではありませんが、ペアで4千円以下という価格を考慮すると上出来かなと思います。
 

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