2015年07月12日

モーター制御 -第2回:ダイオード

前回はモーターとトランジスタを直接繋いでしまうと、モーターの逆電圧でトランジスタが壊れるという話をしました。
今回は逆電圧の保護対策とそのために使用するダイオードという部品について説明します。

10_モーター回路保護付き_1.png


目次



1. ダイオードの説明

ダイオードというのは電流を一方方向にだけ流す部品です。ダイオードには使用目的によってたくさんの種類あります。今回は使用するのは一般整流用ダイオードです。
ダイオードには足が2本あり、それぞれの足をアノードカソードといいます。ダイオードには方向があり、アノードからカソードへ向かう方向を順方向、カソードからアノードへ向かう方向を逆方向といいます。電流は順方向のときに流れ、逆方向では流れません
これがダイオードの回路図と写真です。回路図も写真も線が入っている方がカソードです。

09_ダイオード_1.png

電気を水で例えるとダイオードは弁のようなはたらきをします。。順方向では弁が開き水が流れますが(下図上側)、逆方向では弁が閉じ水が流れません(下図下側)。

09_ダイオード_3.png

09_ダイオード_2.png


2. ダイオードによる逆電圧保護

ダイオードを使い逆電圧を逃がすことで、モーターに接続されているトランジスタを保護します。
これがダイオードで保護したときの回路です。モーターとダイオードを並列接続しています。ダイオードの向きは電源の+側にカソード、-側にアノードです。

0709_DCmotor_Diode_schem.png

スイッチがONのときはダイオードの向きが逆方向となるので、モーターのみに電流が流れ、モーターが動きます。

10_モーター回路保護付き_2.png

スイッチがOFFになった瞬間逆電圧が発生します。このときダイオードの向きは逆電圧に対して順方向ですので、逆電圧で発生した電流はダイオードへ流れ、逆電圧を抑えることができます。

10_モーター回路保護付き_3.png

下図はダイオード保護回路なし(上側)と保護回路あり(下側)で逆電圧が発生したときのモーター電圧波形です。保護回路なしの場合は約-160[V]の逆電圧が発生していますが、保護回路ありの場合は約-10[V]に抑えられています。

10_逆電圧波形保護ありなし_1.png

10_逆電圧波形保護ありなし_2.png
※上の図の「ダイオードがない場合の逆電圧」という注釈は間違っています。正しくは「ダイオードがある場合の逆電圧」です。

逆電圧が完全になくなったわけではありませんが、こうすることでトランジスタが逆電圧で壊れる可能性が大幅に減ります。


このようにダイオードを使うことで、モーターから発生する逆電圧を抑えることができます。
この逆電圧はモーターに限らずコイルを使った部品ならばなんでも発生します。例えばリレー(コイルを使ったスイッチのようなもの)を使用した場合も逆電圧対策としてダイオードが必要です。
次回はArduinoでモーターを動かしてみます。


参考文献

  1. 村田製作所. "ダイオードとは?". 村田製作所ホーム. http://www.murata.co.jp/elekids/compo/diode/, (参照 2015-7-10)
  2. Panasonic. "電子回路におけるリレー使用上のご注意". Panasonic邦人のお客様. https://www3.panasonic.biz/ac/j/control/relay/app_circuits/index.jsp#ANCHOR1, (参照 2015-7-10)


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posted by ました at 18:41| Comment(6) | TrackBack(0) | 電子工作の実践 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初心者です。
教えて頂いてもよろしいでしょうか?
電源が入っている時、モーターに流れ、その後のダイオードとトランジスタとの分岐ではトランジスタに流れていくのに、電源を切った後は、トランジスタにほとんど流れず、ダイオートの方の分岐に流れるのはなぜなのでしょうか?
Posted by fuga at 2017年06月13日 23:56
fugaさんこんにちは。
おそらくですが、電源の入り切りとトランジスタによるスイッチング回路をごちゃまぜに考えられているのかなと思います。その前提で説明いたします。

以前書いた記事ですが、トランジスタはベースの電流を制御することでスイッチのように扱うことができます。
http://play-arduino.seesaa.net/article/416883548.html
今回の記事の回路図ではトランジスタのスイッチング回路をスイッチに置き換えていますが、最終的にはトランジスタのスイッチング回路でモーターを制御します。この記事にその回路図があります。
http://play-arduino.seesaa.net/article/422421632.html

ですのでこの回路はおっしゃられたような「モーターの電源を切った後、トランジスタに電流が流れなくなる」という順番ではなく、「ベース電流を制御することでトランジスタのコレクタに電流が流れなくなり、モーターが止まる」という順番で回路は動作します。
Posted by ました at 2017年06月15日 10:32
コメントありがとうございます。
なるほど、承知しました。
もし、上記の回路図のようにS1〜M1の所にスイッチが別にあり、コンデンサ(点線の□)の真ん中に制御用の電流を流し続けていた時に、スイッチを切った場合は、コンデンサは危険な状態になりますか?

Posted by fuga at 2017年06月21日 03:40
モーター - 電源の間にコンデンサを直列に入れるのですか?そうなるとこの電源は直流ですので、コンデンサが直流をカットし、電流が流れないと思います。
危険かどうかは選択したコンデンサの仕様によりますが、適切なものを選べば大丈夫です。
Posted by ました at 2017年06月22日 14:12
解説ありがとうございます。
すいません、コンデンサではありませんでした。点線の四角はトランジスタですね。間違えました。
Posted by fuga at 2017年06月27日 02:02
トランジスタが点線の四角の位置にあり、ダイオードがモーターと並列に無い場合ですね。その場合にモーターのスイッチを切るなら、ベース電流が流れているかどうかでトランジスタの破損が決まります。
ベース電流が流れているならトランジスタのコレクタには電流を流せますので、スイッチを切っても壊れません。
ベース電流が流れていないならトランジスタのコレクタに電流が流せないので、スイッチを切るとトランジスタは壊れます。
Posted by ました at 2017年06月27日 11:08
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