2015年12月20日

番外編 -スイッチングレギュレータ(降圧型、DC/DC変換)

はじめに

前回はリニアレギュレータについて説明しました。今回はスイッチングレギュレータについて説明します。
なお、今回説明するのはスイッチングレギュレータの中でも降圧型DC/DC変換を行うタイプのスイッチングレギュレータです。


目次



1. 仕組み

スイッチングレギュレータは出力のON/OFFを高速で切り替えて(=スイッチングして)降圧を行います(図1)。このやり方は以前にLED調光を行うために使ったPWMと似ています。電圧を70[%]に降圧したいならDuty比を70[%]に、電圧を40[%]に降圧したいならDuty比を40[%]にするといった具合です。

dec18_スイッチングレギュレータ_1.png
図1 スイッチングレギュレータの動作

スイッチングを行っただけだと出力はパルス波ですので、直流電圧ではありません。そこで出力電圧が直流に近づくよう平滑化を行います。平滑化はコンデンサなどを使った平滑回路で行います(図2)。ただし、平滑化を行っても完全な直流電圧とはならず、多少のノイズが乗ります。

dec18_スイッチングレギュレータ_2.png
図2 スイッチングレギュレータ出力の平滑化

このようにスイッチングレギュレータはスイッチングを行ってパルス波を生成し、それを平滑化して直流にすることで降圧を行います。


2. 利点

スイッチングレギュレータの主な利点は2つです。
  • 無駄になる電気エネルギーや発熱が少ない
  • 入力電圧によって効率が変わらない

無駄になる電気エネルギーや発熱が少ない

スイッチングレギュレータはON/OFFを繰り返して降圧するため、OFFの間は電力の消費が減ります(図3)。そのため無駄な電力の消費を少なくできます。

dec18_スイッチングレギュレータ_3.png
図3 スイッチングによる入力電力の変化

無駄な電力が少ないというのは効率が良いとも言い換えられます。効率は以下の式で求められます。

$効率 = \displaystyle{ \frac{出力電圧}{入力電圧} }$

スイッチングレギュレータは最大効率80〜90[%]程度のものが多いです。ですので、無駄になる電力は入力の10〜20[%]程度です。
リニアレギュレータの効率は入出力電圧差にもよりますが、60〜70[%]くらいが多いです。無駄になる電力は30〜40[%]程度とスイッチングレギュレータの倍近くあります。
無駄になった電力は熱に変化します。無駄になる電力が少ないということは部品の発熱が少ないということです。スイッチングレギュレータはリニアレギュレータよりも発熱が少ないため、放熱の設計が楽になります。

効率が入出力電圧差の影響を受けにくい

スイッチングレギュレータはON/OFFを繰り返して降圧するわけですが、どれだけ降圧するかはON/OFFのDuty比で調整できます
例えば入力電圧が高ければその分ONの時間を短くし(図4)、入力電圧が低ければONの時間を長くすればよいです(図5)。

dec18_スイッチングレギュレータ_4.png
図4 入力電圧:高、Duty比:低のイメージ

dec18_スイッチングレギュレータ_5.png
図5 入力電圧:低、Duty比:高のイメージ

スイッチングレギュレータは入出力電圧差が大きくてもDuty比で調整が可能ですのでリニアレギュレータに比べると、効率が入出力電圧差の影響を受けにくいです。


3. 欠点

スイッチングレギュレータの主な欠点は3つです。
  • 出力にノイズが乗る
  • 部品が高い
  • 外付け回路が必要

出力にノイズが乗る

スイッチングレギュレータはON/OFFを高速で繰り返すので、ノイズの発生源となります。
ノイズは主に2種類あり出力電圧のノイズ電磁波のノイズです(図6)。出力電圧は平滑化を行っても多少変動しているため、この変動がノイズとなります。また平滑前はパルス波なのですが、このパルス波から電磁波が発生しノイズとなります。

dec18_スイッチングレギュレータ_6.png
図6 スイッチングレギュレータのノイズ

ノイズがあまりにも多いと製品の動作がおかしくなったり、他の製品にまで影響を与える場合があります。それらを防止するために、スイッチングレギュレータではノイズ対策が必要な場合があります。

部品が高い

スイッチングレギュレータはリニアレギュレータと比較すると価格が高いです。リニアレギュレータが1個¥20〜¥100に対して、スイッチングレギュレータは1個¥200〜¥500程度です。詳細はリニアレギュレータの利点を参照してください。

外付け回路が必要

スイッチングレギュレータの出力はパルス波形ですので、直流にするには平滑回路を外付けする必要があります。図7はスイッチングレギュレータ(LT1776CN8)とその平滑回路の回路図です。

dec18_スイッチングレギュレータ_推奨回路.png
図7 スイッチングレギュレータ回路例(秋月電子通商 通販コード:I-02788)

3端子レギュレータの外付け回路(コンデンサ×2)と比べると、スイッチングレギュレータの外付け回路はだいぶ複雑です。そのため、リニアレギュレータと比べるとスイッチングレギュレータは回路設計が難しいです。


まとめ

以上、スイッチングレギュレータについて説明しました。説明したことをまとめると以下のようになります。
  • スイッチングレギュレータはON/OFFの切り替え(スイッチング)によって、電圧変換を行う
  • OFFにしている間は電力消費が少ない
  • 利点:無駄になる電気エネルギーや発熱が少ない、入出力電圧差によって効率が変わらない
  • 欠点:ノイズが発生する、部品が高い、回路設計が複雑
利点や欠点はリニアレギュレータと反対です。
個人の電子工作で電源を選ぶ場合、外付け回路が複雑という欠点の影響が多いのでスイッチングレギュレータを使う場面は少ないと思います。とはいえ1[A]以上の電流を扱うような場合にリニアレギュレータを選ぶと放熱の設計が大変ですので、必要な電流が大きい場合はスイッチングレギュレータを使った方がいいと思います。


参考資料

  1. 著書名:CQ出版社. 書名:トランジスタ技術2013年6月号. 出版社:CQ出版社, 出版年:2013, 参照頁(pp.120-132)
  2. 作者名:イーター電機工業株式会社. "効率は高い方がいい!". サイト名:イーター電機工業株式会社. https://www.eta.co.jp/concept/cp_efficiency.cfm, (参照日:2015-12-19)
  3. 作者名:ローム株式会社. "降圧型スイッチングレギュレータの動作原理". サイト名:Tech Web. http://micro.rohm.com/jp/techweb/knowledge/dcdc/s-dcdc/02-s-dcdc/90, (参照日:2015-12-19)
  4. 作者名:Texas Instruments. " スイッチング・レギュレータ". サイト名:Texas Instruments. http://www.tij.co.jp/lsds/ti_ja/analog/glossary/switching_regulator.page, (参照日:2015-12-19)


スイッチング電源設計基礎技術 [ 前坂昌春 ]

価格:2,592円
(2015/12/19 11:40時点)
感想(0件)

posted by ました at 10:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子工作の知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月13日

番外編 -リニアレギュレータ

はじめに

前回は電源について説明し、その中で「直流を直流に変換するDC/DCコンバータがある」と述べました。
DC/DCコンバータにはリニアレギュレータスイッチングレギュレータがあります。今回はリニアレギュレータについて説明します。
(厳密にはDC/DCコンバータ{レギュレータ}はリニアレギュレータもスイッチングレギュレータも含みます。ですがリニアレギュレータはレギュレータ、スイッチングレギュレータはDC/DCコンバータと呼称する場合が多いです)


目次



1. リニアレギュレータとは

降圧と昇圧

リニアレギュレータについて説明する前に降圧と昇圧について説明します。DC/DCコンバータには降圧型昇圧型の2種類があります。
降圧型は電圧を降下させて出力するタイプ(図1)、昇圧型は電圧を上昇させて出力するタイプ(図2)です。

dec11_リニアレギュレータ_1.png
図1 降圧型DC/DCコンバータ

dec11_リニアレギュレータ_2.png
図2 昇圧型DC/DCコンバータ

リニアレギュレータは降圧型です。

降圧の仕組み

リニアレギュレータは余分な電気エネルギーを熱エネルギーとして捨てることで降圧しています。
入力電圧5[V]、出力電圧3.3[V]のリニアレギュレータを例に考えます。5[V]の電気エネルギーの内、3.3[V]より下は必要な電気エネルギーですが、それより上は不要な電気エネルギーです(図3)。

dec11_リニアレギュレータ_3.png
図3 リニアレギュレータの電気エネルギー配分1

リニアレギュレータは必要な分の電気エネルギーは電気のまま出力し、不要な分の電気エネルギーは熱エネルギーに変換して捨てます(図4)。

dec11_リニアレギュレータ_4.png
図4 リニアレギュレータの動作

このようにリニアレギュレータは電気エネルギーの一部を熱エネルギーとして捨てることで、降圧を行っています。


2. 利点

リニアレギュレータの利点は主に3つです。
  • 部品代が安い
  • 回路設計が容易
  • 出力する電気が安定している

部品代が安い

リニアレギュレータ(三端子レギュレータ)はスイッチングレギュレータ(DC/DCコンバータ)と比較すると部品代が安いです。
例えば秋月電子通商で「三端子レギュレータ」を検索すると、1個当たり¥20〜¥100程度です。一方、「DCDCコンバータ」で検索すると、1個当たり¥200〜¥500程度です。
このようにリニアレギュレータの価格はスイッチングレギュレータの数分の一程度と、比較的安価です。

回路設計が容易

リニアレギュレータの中でもよく使われるのが三端子レギュレータです。三端子レギュレータの端子は入力・出力・GNDの3つです(図5)。

dec13_三端子レギュレータ.jpg

図5 三端子レギュレータ(秋月電子通商 通販コード:I-08678)

三端子レギュレータの回路は基本的に入力側と出力側にコンデンサを1つずつ付けるだけです(図6)。あとは入力側に電圧を入力すれば、出力側から電圧が出力されます。

dec11_リニアレギュレータ_5.png
図6 三端子レギュレータ回路

三端子レギュレータ自身を含めても部品点数は3点と少ないため、回路設計が容易です。
(上記の例は出力電圧が固定の場合です。3Gカメラで使用した三端子レギュレータは出力電圧が可変ですので、電圧設定用の抵抗器が必要です)

出力する電気が安定している

リニアレギュレータは不要な電気を熱として捨てますが、捨てることで出力する電気が安定(=平滑化)します。
リニアレギュレータに入力する電圧が不安定な場合でも不安定な部分は熱として捨てられるので、出力されるのは安定した部分の電気です(図7)。

dec11_リニアレギュレータ_6.png

図7 リニアレギュレータによる平滑化


3. 欠点

リニアレギュレータの欠点は主に2つです。
  • エネルギーの効率が悪い
  • 放熱の設計が必要

エネルギーの効率が悪い

リニアレギュレータは不要な電気エネルギーを熱エネルギーとして捨てるため、捨てる分のエネルギーが無駄です(図8)。特に入力電圧と出力電圧の差(入出力電圧差)が大きいほど、効率が悪くなります。

dec11_リニアレギュレータ_7.png
図8 リニアレギュレータの電気エネルギー配分2

電気エネルギーの量は電力、ワット[W]で表せます。電力をP[W]、電圧をV[V]、電流をI[A]とすると、電力の計算式は下記の通りです。

$P = V \times I $

例えば、入力電圧5[V]、出力電圧3.3[V]、出力電流50[mA]の場合を考えます。(入力電流=出力電流です)入力電力をPin[W]、必要な電力(出力電力)をPout[W]、不要な電力をPloss[W]として計算すると以下のようになります(図9)。

$ P_{in} = 5 \times 50 = 250[mW] $

$ P_{out} = 3.3 \times 50 = 165[mW] $

$ P_{loss} = ( 5 - 3.3 ) \times 50 = 85[mW] $

dec11_リニアレギュレータ_8-1.png
図9 リニアレギュレータの電力計算1

この場合、入力電力に対する不要な電力の比率は 85/250 = 0.340 です。

次に入力電圧12[V]の場合を計算します。式などは省略しますが、Pin=600[mW]、Pout=165[mW]、Ploss=435[mW]となり、不要な電力の比率は0.725です(図10)。

dec11_リニアレギュレータ_9-2.png
図10 リニアレギュレータの電力計算2

入力電圧が5[V]から12[V]になることで、無駄な電力の比率は0.340から0.725に上昇しました。このようにリニアレギュレータでは入出力電圧差が大きいほど効率が悪くなります

放熱の設計が必要

リニアレギュレータは電気エネルギーを熱に変換して捨てているため、熱が発生します。発生する熱が多すぎると部品や回路などの温度が上がり続け、最悪の場合は部品や回路が壊れます
そのため、リニアレギュレータを使う場合は電力に合わせた放熱設計が必要です。主な放熱の方法はリニアレギュレータに放熱板などを取り付けることです(図11)。

dec13_放熱板.JPG
図11 放熱板(秋月電子通商 通販コード:P05049)

発生する熱は捨てる電力の量で決まります。入出力電圧差や出力電流が大きいと捨てる電力が増えるので、より多くの熱を放熱できる設計をしなければなりません。


まとめ

以上、リニアレギュレータについて説明しました。説明したことをまとめると以下のようになります。
  • リニアレギュレータは降圧型のDC/DCコンバータ
  • 不要な電気エネルギーを熱エネルギーとして捨てることで降圧している
  • 利点は安い、回路設計が容易、出力電圧が安定
  • 欠点は効率が悪い、放熱設計が必要

欠点はあるものの価格や回路設計などの利点もありますので、消費電流が数十[mA]程度の場合は三端子レギュレータが便利です。
次回はもう一つのDC-DCコンバータ、スイッチングレギュレータについて説明します。


参考資料

  1. 著書名:CQ出版社. 書名:トランジスタ技術2013年6月号. 出版社:CQ出版社, 出版年:2013, 参照頁(pp.115-116)
  2. 作者名:ローム株式会社. "リニアレギュレータの動作原理". サイト名:Tech Web. http://micro.rohm.com/jp/techweb/knowledge/dcdc/s-dcdc/01-s-dcdc/72, (参照日:2015-12-13)


トコトンやさしい電源回路の本 [ 相良岩男 ]

価格:1,512円
(2015/12/13 17:44時点)
感想(0件)


posted by ました at 17:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子工作の知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月06日

番外編 -電源

前回のコンデンサに引き続き、今回も3Gカメラに関する説明を行います。
元々は三端子レギュレータについて説明する予定でしたがそれは次回とし、今回は電源について説明します。


目次



1. 電源とは

電源とは電気を供給する装置や部品です。電気製品は電源から電気を供給してもらわないと動きません。
身近な電源には発電所乾電池などがあります。これらの電源は電気以外のエネルギーから電気を作る電源です。発電所は発電機を回転させて、乾電池は物質を化学反応させて電気を作ります。

dec05_電源_1.png
図1 電源のイメージ

電源には他にも種類があり、電気から電気を作る電源(=変換器、コンバータ)があります。パソコンなどに付属しているACアダプタや3Gカメラの三端子レギュレータが該当します。
この電源の役割は電気が電気製品と合うように変換することです。電気製品を動かせる電圧や電気の種類(交流・直流)は決まっています。電源の出力する電気と電気製品を動かせる電気が合っていない場合、コンバータを使って電気を変換します。

dec05_電源_2.png
図2 電源(コンバータ)のイメージ

これらの電源を組み合わせて必要な電気を作ることで電気製品を動かせます。

dec05_電源_3.png
図3 電源から電気製品までの流れ


2. 交流と直流

先ほど、電気の種類として交流・直流と書きました。電気は交流(AC, Alternative Current)と直流(DC, Direct Current)の2種類があります。発電所は交流で、乾電池は直流です。
交流と直流の違いで分かりやすいのは電圧波形です。交流の電圧は+と-を行ったり来たりして波の形をしています。一方、直流の電圧は一定です。

dec05_電源_4.png
図4 交流と直流

交流と直流は特性が異なりますので、交流に対応した電気製品には交流電源直流に対応した電気製品には直流電源を使わないといけません。


3. コンバータの種類

Arduinoなど大半の電子機器を動かすには直流電源が必要ですが、コンセントは交流電源です。そのためコンセントの電気でArduinoを動かすためには交流を直流に変換する電源が必要です。このような電源をAC/DCコンバータといいます(表記はAC/DC以外にAC-DCやACDCなどがあります)。例としてパソコンに付属しているACアダプタがあります。


dec05_電源_5.png
図5 AC/DCコンバータ

電子機器を動かすには交流か直流かに加えて、電圧が機器と合っていることも必要です。そのため、入力された直流の電圧を変換して出力する電源も必要です。このような電源をDC/DCコンバータといいます。例として三端子レギュレータがあります。
(三端子レギュレータは広義の意味ではDC/DCコンバータですが、一般にDC/DCコンバータと言った場合は三端子レギュレータを含まないです。次々回あたりで説明します)

dec05_電源_6.png
図6 DC/DCコンバータ


4. 電源の組みあわせ

これで交流電源、直流電源、AC/DCコンバータ、DC/DCコンバータを説明しました。電子機器を動かすにはこれらの電源を組み合わせて、必要な電気を作ります。
例えば、ArduinoはパソコンとUSBケーブルで接続して動かす場合が多いですが、そのときは電源を図7のように組み合わせています。パソコンにはAC/DCコンバータなどがついているため、パソコンが電源代わりとなります。

dec05_電源_7.png
図7 Arduino動作時の電源(USB使用時)

また、ArduinoはUSBケーブル接続だけでなく、ACアダプタ接続(DC 7[V] 〜 DC 12[V])でも動かすことができます。このときの電源の組みあわせは図8です。

dec05_電源_8-1.png
図8 Arduino動作時の電源(ACアダプタ使用時)

Arduinoの中にも電源があります。Arduinoの電源は図9のように、DC 7[V] 〜 DC 12[V]をDC 5[V]に変換したり、DC 5[V]をDC 3.3[V]に変換したりします。

dec05_電源_9.png
図9 Arduino内部の電源


上記で説明したことをまとめます。
  • 電源には電気を作る電源と電気を変換する電源(コンバータ)がある。
  • 電気には交流と直流がある。
  • 電子機器を動かすには様々な電源を組み合わせて、機器に合う電気を供給する必要がある
これで電源についての説明は終わりです。次回は三端子レギュレータの説明をします。


参考資料

  1. 作者名:TDK株式会社. "パワーエレクトロニクス・ワールドへ、ようこそ。". サイト名:TDK株式会社. http://www.tdk.co.jp/techmag/power/200806/index.htm, (参照日:2015-12-06)


トコトンやさしい電気の本

価格:1,512円
(2015/12/6 15:34時点)
感想(0件)

posted by ました at 16:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子工作の知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月29日

番外編 -コンデンサ

前回まで3Gカメラの作成を行いました。3Gカメラではコンデンサ三端子レギュレータなど今まで説明しなかった部品を使いました。今回からそれらの部品について説明をしようと思います。
今回はコンデンサについて説明します。


目次



1. コンデンサの外観や記号

コンデンサが何かの前に見た目を説明します。
図1がコンデンサです。部品が3つありますが、全てコンデンサです。

P1000272.jpg
図1 コンデンサの写真

形状によってコンデンサの種類や役割が違うのですが、今回は種類に関する説明は省略します。
図1を見て分かるように、コンデンサの足は2つです。ですので、回路記号も端子は2つです。回路記号を図2に示します。

nov28_コンデンサ_1.png
図2 コンデンサの回路記号

図3は3Gカメラでコンデンサが使われている部分です。丸で囲んである箇所がコンデンサです。回路作成ソフトの都合でコンデンサの線が太いですが、「=」の記号がコンデンサです。
回路ではコンデンサをCで表します。図3のコンデンサはそれぞれC1とC2です。

nov28_コンデンサ_2.png
図3 3Gカメラ回路図(コンデンサ使用箇所のみ)


2. コンデンサの働き

コンデンサの働きは色々あるのですが、3Gカメラでは電圧の変動を抑えるためにコンデンサを使いました。電圧の変動を抑えることを平滑化といいます。
図3のIC1が電源の部品ですので、コンデンサはIC1に入力される電圧と出力される電圧の平滑化を行っています。

(以下の話は全て直流の場合です。直流についての説明はそのうちしたいと思います)
まず電圧の変動について説明します。ICを動かすためには電源から電気を供給する必要があります。
このとき、理想の電気は電圧が全く変動せずに平らな状態です。しかし、実際は図4のように電圧がギザギザな形に変動しています。

nov28_コンデンサ_3-1.png
図4 電気の変動がある回路

電圧変動が大きいとICが正しく動かない場合があるので、電圧変動は抑えた方がよいです。電圧変動を抑えるためにコンデンサを使います
図5はコンデンサを使って電圧変動を抑えた回路です。コンデンサは電源とGNDの間に接続します。

nov28_コンデンサ_4.png
図5 コンデンサで平滑化を行った回路

コンデンサをこのように接続することで電圧の変動を抑えることができます。
(図5ではコンデンサの左側と右側で電圧波形が異なるように描いていますが、表現の都合です。実際はコンデンサの左側と右側の波形は同じです)

なぜ、コンデンサを使うことで平滑化できるかを説明します。
コンデンサはとても小さい充電池のようなもので、電圧を一定にしようと充放電を行います
電源の電圧が下がった場合、コンデンサは放電することでICに供給される電圧を一定にしようとします。
一方、電源の電圧が上がった場合、コンデンサは充電することでICに供給される電圧を一定にしようとします。

例えるなら、コンデンサはバネのようなはたらきをします。電気をボールの流れとすると、電圧の変動は流れのムラのようなものです。
ボールの流れにムラがあったとしても、バネが伸び縮みすることで、ボールのムラを抑えることができます。

nov28_コンデンサ_5.png

図6 コンデンサによる平滑化のイメージ


3. コンデンサの単位

電圧は[V]、抵抗値は[Ω]と単位があるように、コンデンサにも単位があります。
コンデンサの単位はF(ファラド)といい、コンデンサが充放電できる容量を表します。大きいほど充放電に時間がかかりますし、小さければ一瞬で充放電が終わります。
電源の平滑化では0.1[μF]〜10[μF]くらいの容量のコンデンサがよく使われます。

コンデンサはとても小さい充電池のようなものといいましたが、容量が小さすぎるため基本的には充電池の代わりになりません
回路やコンデンサの容量にもよりますが、数マイクロ秒から数ミリ秒くらいで充放電が完了します。


コンデンサについての説明をまとめます。
  • とても小さい充電池のようなもので、充放電を繰り返すことができる
  • 電源とGNDの間に接続することで、電圧変動を抑えることができる
  • 単位はF(ファラド)といい、コンデンサの容量を表す
次回は三端子レギュレータについて説明しようと思います。


参考資料

  1. 作者名:村田製作所. "コンデンサとは?". サイト名:村田製作所. http://www.murata.com/ja-jp/campaign/ads/japan/elekids/compo/capacitor, (参照日:2015-11-29)


トコトンやさしい電子部品の本 [ 谷腰欣司 ]

価格:1,512円
(2015/11/29 17:20時点)
感想(1件)

posted by ました at 17:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子工作の知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月01日

番外編 -I2C その2(詳細)

前回はI2Cの概要について説明しました。今回はI2Cの詳細を説明します。


目次


1. やり取りの順番

前回説明したようにI2Cを行うためにはマスタースレーブの2種類が必要で、アドレスやACKなどのやりとりを行います。
マスター-スレーブ間のやり取りを図に示します。図1はRead実行時、図2はWrite実行時です。
図の上から順にやり取りを行っていき、矢印は通信の向きを示しています。マスターからスレーブへ向かう矢印はマスターが送信しスレーブが受信するという意味です。

nov01_I2C_1.png
図1 Read実行時のやり取り

nov01_I2C_2.png
図2 Write実行時のやり取り

図の内容を箇条書きでまとめます。
  1. マスターが通信開始を指示する
  2. マスターが通信を行うスレーブのアドレスRead/Write(R/W)のどちらを行うかを指示する。スレーブはアドレスを受け取れたかどうか返事をする
  3. 送信側がデータを送り、受信側は受け取れたかどうか返事をする。(マスターとスレーブのどちらが送信側と受信側になるかはR/Wの指示に従う)
  4. データのやり取りを続けるなら3を繰り返す。やり取りを終えるならマスターが通信終了をスレーブに指示する
マスターが色々な指示を出し、スレーブはそれに従って動作します。
やり取りの中には名前が決まっているものもありますので、以下に示します。
  • 通信開始の指示:スタートコンディション
  • 通信終了の指示:ストップコンディション
  • 受信に成功したときの返事:ACK(Acknowledge)
  • 受信に失敗したときの返事:NACK(Not Acknowledge)


2. 波形

実際にI2Cの通信波形を使ってやり取りの順番を説明します。図3が実際にI2Cで通信(Write)を行った波形です。
※図3の波形は波形にノイズが乗っていたり、ACKが0[V]に下がりきっていないなどの問題があります。とはいえやり取りの順番の説明程度には使えますので、ノイズなどは無視してください

nov01_I2C_3-1.png
図2 Write実行時のやり取り

I2Cは同期方式ですので、SDAはSCLのタイミングに合わせて変化します。基本的にはSCLがLowのときにSDAが変化します。SCLがHighのときにSDAが変化してはいけません。
ただし、スタートコンディションとストップコンディションは例外で、SCLがHighのときにSDAが変化しなくてはなりません。SDAの立ち下がりがスタートコンディション、立ち上がりがストップコンディションです。

I2Cは8[bit]ずつやり取りを行います。初回はアドレス7[bit]とR/W 1[bit]で合計8[bit]、2回目以降はデータ8[bit]ずつやりとりします。受信側は8[bit]毎にACK/NACKを返します。
また、アドレスやデータは上位ビットから送ります。ですので、図3のアドレスは0111110=0x3E、データは10110011=0xB3です。
(シリアル通信では反対に下位ビットから送ります

R/WとACK/NACKの論理は次の通りです。
  • R/W:0ならRead、1ならWrite
  • ACK/NACK:0ならACK、1ならNACK
図3でやり取りしているR/WはSDAが0なのでRead、ACK/NACKはSDAは0なのでACKです。


このようにI2Cではスタートコンディションやストップコンディション、アドレス、R/W、ACK/NACK、データのやり取りを指定された順で行います。
次回は実際にI2Cを使ってみようと思います。


参考資料

  1. 作者名:NXP Semiconductors. "I2C バス仕様およびユーザーマニュアル". サイト名:NXP Semiconductors. http://www.nxp.com/documents/user_manual/UM10204_JA.pdf, (参照日:2015-11-01)

マイコンにプラス!シリアル拡張ICサンプルブック LED/モータからA-D/D-A変換まで2線インターフェースI〔2〕Cで数珠つなぎ!

価格:3,888円
(2015/11/1 17:20時点)
感想(0件)

posted by ました at 17:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子工作の知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする